フィールドワークとベイジアンネットワーク


企業データに向き合うとき、その裏側にある顧客インサイトを感じながら、
蓄積・収集されているデータ項目の種類(「説明変数」)では、
顧客行動心理を立体的に表現し切れないなと思うことが多い。

「ビッグデータ」や「データサイエンティスト」などの言葉を目にすることがほんとうに多くなったし、
実際テクノロジーは進んでいると思う。
たとえば、
以前使っていたニューラルネットワークはブラックボックスだったが、
ベイジアンネットワークはホワイトボックスで、有向グラフでノード間の関係と全体像を
理解しやすいモデルで表現してくれる。
しかし、
このベイジアンネットワークの技術があっても、適切なノードをつくることができなければ、
その性能を使いこなすことはできない。
いくら分析テクノロジーが進化しても重要な「説明変数」がなければ、
事象を表現することは難しい。

顧客行動を説明する「変数」の種類は無限にある。
その中から、クリティカルな「説明変数」をどのように見出せばいいのかという課題が重要だと
あらためて気づかされる。

そして同時に、
この課題に対しては、やはりフィールドワークという技術が有効ではないか
さらには、
フィールドワークとベイジアンネットワークは、もっと相互活用できるのではとも思いがめぐる。

振り返れば、
2000年正月に研究室にこもって、同じような課題意識を感じていた記憶がある。
(その当時から思考が進んでいないのか?あるいは、これが本質なのか?それは今の私にはわからない。)

当時の研究テーマは、
「うまくいっている組織の成功要因は何か?」「なぜ、あの組織は日本では不可能と言われていることを実現できているのか?」、それを明らかにしたいと考えていた。
教授が言う。「まず先行研究をしっかり読むように」と。そして「A4一枚に研究計画を書いてくるように」と。
何度書いても、チェックが入りOKが出ない。悪戦苦闘のA4一枚。

そんな状況だったので
教授に紹介された論文や入手できる学会誌など手当たり次第に読んだ。
どのような目的で、どのようにデータを収集し、どのような分析をして、どのような結果を出したのか。
いくつもの論文を読み進めていく中で、
現象を説明できる変数をそもそも収集できていないのではないか、調査分析を始める前段階の仮説モデルや分析枠組みを構築する時点で、重要な説明変数への考慮が抜け落ちてしまっているのでは、クリティカルな説明変数が抜ければ、いくら分析しても社会も組織も説明することはできないと、多くの定量調査の進め方に問題意識を持った。

だから、
アンケート調査→SPSSで統計解析という定量的はアプローチでなく、質的研究を選ぶことにした。
(ハイブリッドの発想はその時は持てなかった。)

研究計画とまとめ、インタビューを設計し、フィールドワークに出た。
現場に行き、様々な人に会い、それぞれの組織の歴史ストーリーを語ってもらい、時には先方の会議にも参加し、できる限り深く情報を収集した。当時は正則なKJ法を知らなかったので、何とかそれをまとめながら、また次のフィールドワークに出ていった。

フィールドワークに出る特性は、この時にできたのかもしれない。

その後、
金融機関に入社すると膨大なデータが目の前にあった。
データベースに蓄積されているのは「量」だけではなく何百もの変数を持つ複雑なデータ。それを目の前にして、自然とフィールドに出て行った。現場に座り、話し、歩き、観察したりする。
そうするとオフィスでは思いつかなかったアイデアが突如降りてくる。

そして、オフィスに戻り、降りてきた仮説を表現するために、数字に向き合う。
身体にある現場の感覚を何とか、今データベースにあるデータで表現できないかと試行錯誤していたようにも思う。
そして、当初は「それは無理、できない。まあやってみ。」と言われていたプログラムが完成した。
小さな小さなプログラムだったけれども、新入社員3,4ヵ月目の自分にとっては十分に大きな出来事だった。定性と定量のハイブリッドを初めから狙ったわけではなくて、得意な方法を使ってみただけだったけれど、とにかくうまくいって本番採用された。

長くなってしまった。話を(やっと)元に戻すと、
今、CRMやマーケティングの分野でも、「説明変数」の不足という同じ課題を感じている。
この分野でも、フィールドワークの手法はエスノグラフィーなどと使われてはいるし、実際に自分でもいくつもの事例で活用してきた。
ベイジアンネットワークが表現するモデルに向き合うと、フィールドワークとベイジアンネットワークの2つの技術は、もっともっとコラボできるのだと思う。
徳見と開発し提唱した「ご近所リサーチ」という定性調査。最近、これはベイジアンネットワークのための手法ではないかというほどに思い始めている。

具体的にはSynergyMarketingオープンラボ2013で発表できればと考えている。
そして研究は続く。


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