オタク・イノベーション


はじめまして、歐陽宇亮(オウヨウ ウリョウ)と申します。香港出身で12年前に日本上陸し、東大大学院で社会学を専攻した一介の婦女子です。MEMBERページでも私のプロフィールがご覧になれます。今後ともよろしくお願いいたします。

大学院では文化消費研究やメディア論、コミュニケーション研究を専攻しておりましたが、得意分野はなんと言っても「オタク文化」です。というのも、多くの外国人がそうであるように、私はまた日本のオタク文化に惹かれて日本にやってきたのです。というわけで一回目は「オタク」を切り口に、日本のソーシャル・イノベーションを語らせていただきたいと思います。名づけて「オタク・イノベーション」です。

お聞きになっている方も多いかと思いますが、近年アニメなどの作品の舞台を回るという新たな観光ブームが起こっており、自ら町おこしのチャンスと捉え積極的にアピールする自治体や地域団体が続々と現れています。この「アニメツーリズム」のパイオニアでありもっとも成功した事例と言われるのは、アニメ『らき☆すた』の舞台とされる鷲宮町(現久喜市鷲宮区域)です。

鷲宮は、2007年のアニメ放送当時からファンが続々と訪れ始め、現地の商工会が北海道大学と組んで積極的な誘致を行った結果、2007~2009年で町の中心にある鷲宮神社への参拝客が30万人も増加し、作品ファンのみならず一般人の関心も喚起でき、古びた町が大いに繁盛しました。

町の商工会の公式サイトを見ても、「萌え」や「アニメ」、「オタク」といった要素を大々的に利用しているのが分かります。
<商工会公式サイト>http://www.wasimiya.org/

最近では岐阜県高山市(作品名:『氷菓』)や広島県竹原市(作品名:『たまゆら』)による取り組みがスポットライトを浴びています。両市ともに舞台巡礼マップなどを作って観光客誘致に力を入れています。竹原市に至ってはサイトのディスクリプションに「アニメ『たまゆら』の舞台です」と謳っています。
<高山市×『氷菓』>http://www.hidamiya.com/event/map.html
<竹原市×『たまゆら』>http://www.city.takehara.lg.jp/sangyou/kankou/kankou/tamayura_butai.html#tamayura

舞台巡礼による地域活性化の成功の鍵は、要約するとこんな感じですね。

●ノリ/肩の力が抜けている/楽しい
●ディレクションしすぎない/コントロールしようとしない
●交流/ふるさと/人情

「舞台巡礼」から地域活性化において汎用性のある要素を抽出して、アニメなどオタク文化のコンテンツに依存しなくても、同様のソーシャル・イノベーションが起こせる。だから「オタク・イノベーション」なのです。

上記の中で、「交流」=コミュニケーションが、成功を長続きさせるもっとも大事な要件です。
コミュニケーションは地域住民対訪問者のみならず、訪問者同士のものでもあり、地域住民+訪問者同士で「楽しいコミュニティ」が形成できたら、自然と「ノリ/肩の力が抜けている/人情」等が実現します。

そして次は、訪問者のクリエイティビティに委ねることです。つまり「ディレクションしすぎない/コントロールしようとしない」ところですね。
昨今、色々とマナーの問題が提起されていますが、必要最低限の線引きをしながら、できるだけ訪問者の創造性に委ねるのが成功の秘訣です。

「ふるさと」と「人情」は、この時代においては大きなアピールポイントになります。今の日本は「ふるさと願望」「ふるさと想像」の時代になりました。
アニメやゲームなんかはまさにその先兵で、数十年前から「田舎」を舞台としたり、良い意味で古臭さを感じさせる「物語」を体験させています。「物語」の中で「古き良き日本」に浸かるオタクたちが、いつの間に「現実」の中で「ふるさと」を味わっているという「意図せざる結果」が生まれています。

特にオタクと呼ばれている人たちは自分のことを「恥」と捉え対外閉鎖的な特徴が一般に見られますので、彼らの「恥」までも受け入れて一緒に楽しく盛り上がっていく「古き良き日本」の人たち・町がある……最高じゃありませんか。まるで心地よい温泉にでも浸かっている感じで、肩の力は自然と抜けますね。
それは、一見矛盾しているようで、実はとても理に叶っています。

それはオタクだけではなく、また鷲宮だけではなく、一般の人、一般の町にも通用することです。

ちなみに、国内市場にとどまらず、対外的にも日本政府が500億円を投入してオタク文化を「クールジャパン」の一環として利用するように、日本のアニメなどのコンテンツは海外での認知度は極めて高く、目覚しい速度で発展中の有望市場でも日本コンテンツのファンが非常に多いです。日本=萌えアニメという認識をもつ外国人も少なくありません。

オタクでも、オタクでなくても、リラックスして楽しく自由に交流ができる人情ありふれる古き良きふるさと……これは将来の理想的な町、理想的な地域活性化の形だと私は信じています。

次回は、趣向を変えて最新技術についてお話したいと思います。
例の如く、オタク文化とかけて。
でわでわ。

続きはこちら:「喋るスマートフォンは『ヘンタイ』でなきゃ面白くない!」
http://lab.synergy-marketing.co.jp/blog/other/emopa

【Extended reading】
「アニメツーリズムの可能性」(Business Media 誠):http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0903/23/news042.html


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