データから何を見るのか。ソーシャルグッドなデータ分析


ビッグデータ。その単語から何となく世間でイメージされるのは「いままで取得できなかったデータが手に入れば、さまざまな課題への仮説と解決策が提示される」ということではないでしょうか。そんなデータ・ドリブン(データありき)の考え方もあるけれど、基本的に私は課題ありきだと考えています。
まずは課題を可視化すること。そしてそれを他の人に伝わるように知らせること。データはあくまで裏付けでしかありません。しかしそこにデータがあることで、そしてデータをわかりやすく伝えることで説得力を持って人に伝えることができると考えています。

世界的な流れに”ソーシャルグッド”があります。ソーシャルグッドという単語の定義は決まっていないようですが「社会的に良いこと/良い行為」でしょうか。
例えばミネラルウォーターのvolvic「1リットル for 10リットル」のキャンペーンを覚えている人も多いのではないでしょうか。ミネラルウォーターを買えば、その分企業(キリン)が清潔な飲料水が不足しているマリに井戸を掘るユニセフに寄付をするというキャンペーン。このキャンペーンを行うことでVolvicやキリンのブランドイメージはおそらく良くなり、少し値段が高くてもミネラルウォーターを買う際にvolvicを選択する人もいたのではないでしょうか。ソーシャルグッドをマーケティング、ブランディングに利用した好例だといえます。

今やこの"ソーシャルグッド"はとどまるところを知りません。広告の世界で衝撃が走ったのは、世界的な広告賞、カンヌライオンズの名称が2011年に変わり”広告”の文字が消えたことです。以前は「Cannes Lions International Advertising Festival(カンヌ国際広告祭)」でしたが、”Advertising”がなくなり「Cannes Lions International Festival of Creativity(カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル)」となりました。この頃から、アイディアを元に社会課題を解決するようなものが受賞作品として選ばれることが多くなっています。
例えば、骨髄バンクへの登録のハードルを下げるために、絆創膏のキットに骨髄バンク登録の封筒を封入しておいた、その取り組みそのものが受賞するなど"HELP I WANT TO SAVE A LIFE"。以前であれば、コマーシャルフィルム等に対しての賞であったカンヌですが、すっかり様変わりしています。
(なお、余談ですが、あまりにもソーシャルグッドなエントリーが多すぎて、何も考えずにキレイ!ステキ!笑える!と思いたい!!という声もあるようです。ちなみに…カンヌライオンズの2014年の受賞・主要な作品まとめはコチラ。アイルトン・セナの走行データから、同じ景色を見られるHONDAのビジュアルも受賞しています!)

そのソーシャルグッドな流れはデータ分析にも押し寄せており、ジャーナリズムの分野でも”データジャーナリズム”が台頭してきています。ジャーナリズムの権威ピュリツァー賞でも、2012年に新しい形態の記事が受賞したことが話題になりました。NYタイムズのSnow Fallは、雪崩事故を位置情報から得たビジュアルやテキストなどで伝えて、ジャーナリズムの世界を一変させたとも言われています。
 イギリスのガーディアンでは2011年8月に起きた暴動をビジュアル化して伝えています。"England riots:was poverty a factor?"キャメロン首相(当時)が「暴動は貧困問題と関係ない」と発言したことに対して、暴動で摘発された人の住所と地域別階層データを重ねて、最貧困地区の人が実に6割であることを伝えています。

このような世界的な流れがあるのでしょう、2015年よりカンヌライオンズに「クリエイティブデータ」部門が新設されることになりました。ますます、データ分析の世界でも、誰のどんな課題をどのように伝えたのか?ということが重要視されるようになるでしょう。

ひるがえって、日本ではどうでしょう。企業のデータだけでなく、自治体のオープンデータから"ソーシャルグッド"や"ビジネス"が生まれているでしょうか?アメリカでは、過去の犯罪が起きた場所から将来犯罪の起きそうな場所を予測して警察に売るベンチャー企業だとか、さまざまな条件を加味した上で不動産価格を推定するサービスなど、さまざまなビジネスが生まれています。日本でデータを活用したビジネスやソーシャルグッドはまだまだ道半ばかもしれませんが、日本にも必ずその流れがやってくるでしょう。私たちも日々データを使って企業・社会の課題解決に邁進するつもりでいます。

参考
◆NHKクローズアップ現代「公共データは宝の山~社会を変えるか?オープンデータ~」2014年9月17日(水)放送
◆湯浅正敏「データクリエイティブ ージャーナリズムと広告の融合」日経広告研究所報 277号
データジャーナリズム最新事例とこれからの民主主義 MITメディアラボ所長・伊藤穰一氏が語る


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