「あまい」「にがい」から連想すること ... ことばの連想構造は人によって異なるのか


こんにちは、馬場です。

去年のオープンラボ今年2月のテキストマイニングシンポジウムでは、「あまい」という言葉から連想することばが人によって異なるのか、価値観の違いに着目して分析をしました。

今回、他の「にがい」「からい」などの味覚語からの連想を分析しました。

前回までの研究

アンケート設問
調査はSocietas価値観/食に関する価値観を聴取するWeb アンケート調査において、右のように連想ゲームをしてもらう設問を用意し、回答してもらいました。(回答数1030人)

以前の研究では以下の仮説をもって分析を行いました。

  • ことばを受け取った時に人が描く印象は人によって異なる
  • 連想語を聴くことにより、人が描く印象の片りんをみることができる
  • その人のもつ価値観が人の描く印象に影響を与える

この仮説をもとに、価値観類型ごとに連想語彙のパターンを抽出、さらにこのパターンをもとに連想語を分類し、連想語グループ間の連想の遷移と価値観との関係のモデル化を試みました。

ただし、分析を進めるうちに、以下の疑問があがりました。

  • 人による連想の差異を調査する前に、普遍的な人の連想パターンのようなものを見つけるべきではないだろうか?
  • 価値観より、性別や年齢などの経験的要素の方が連想の基盤となる個々人の語彙に影響を与えるのでは?

また、単語数のバリエーションが多かったため、集計・クラスタリングし分析をしていました。自然なアプローチではあるものの、連想の生データをクラスタリングや集計することなく観察することができれば、私の視点に偏らない仮説を得られるのではないか、と考えました。

連想構造を可視化する

そこで、連想構造の可視化しました。そのネットワークの形や大きさなどの幾何学的特徴から、データやことばの連想の構造が見えてくるのではないか。

以下のルールに従い、可視化を行いました。

  • 連想データを味覚語(例:あまい)をルートとしたツリー構造のデータに変換
  • 上記データを味覚語ごとに可視化する
  • 同じ単語でも連想経路が異なる場合は違うノードとして表示する(例:「ケーキ」は、「あまい→砂糖→ケーキ」、「あまい→ケーキ」など複数の連想経路上に登場する)
  • ノードの円の大きさ = log(経路上での単語の発言人数)
  • リンクの太さ = sqrt(経路上の単語の遷移人数)
  • ノードにマウスオーバーすると味覚語からそのノードまでの経路とその次の連想語をハイライトする
  • ポジティブなことばは文字色ピンク/ネガティブなことばは文字色青で表示
  • 性別/年代ごとに連想経路をハイライトできるボタン設置

可視化データは以下で公開しています。

あまい
からい
しょっぱい
すっぱい
にがい

表示後しばらく、レイアウト計算のためノードが動きます。ノード数が多いため、全体を1画面で表示できません。適宜スクロールしてご覧ください。またノードはドラッグ&ドロップすることにより移動可能です。

「あまい」の可視化は以下のようになります。

sweet_visualize

考察

可視化した結果をみることにより、いくつかのパターンを発見しました。

連想の王道:「味覚語 → その味がするもの → 色」

あまい→砂糖→白

sweet_main

からい→唐辛子→赤

hot_main

すっぱい→レモン→黄色

sour_main

味覚語とそこから連想される食べ物1位の単語は、連想される言葉に類似性がある

あまいと砂糖
sweet_similar

からいと唐辛子

hot_similar

年代により連想語の語彙に差がある

すっぱいの例

sour_demo_difference

その他、以下のことが観察できました。

  • 同じ言葉(例:梅干、梅干し、うめぼし)は表現の違いによらず連想語が似る。これは、同じ概念を共有しているといえるのか?
  • ポジティブ/ネガティブに関して
    • 健康 → まずい → 不快 というイメージがある
      食べ物で最初に「健康によい」ことをアピールしすぎると、「まずい」「おいしくない」というネガティブな 印象が最初にきて、判断を躊躇させるのではないか?
    • あまい → おいしい にがい → まずい につながる
    • すっぱい/からい は「おいしい」ではなく「好き」と表現される
  • 出現経路によらず連想語の語彙が似ている。連想はコンテキストの影響をうけにくい?

得られた新たな仮説

可視化データの観察から、新たな仮説を3つ得ました。

1点目は「人には共通のことばの連想パターンが存在するのではないか」という仮説です。今回の実験では「味覚 → 食べ物 → 色」というパターンが多くみられましたが、これは「ことば」を「連想」するということにより、例えそのことばが味覚の単語であっても視覚的イメージを刺激し、それは人によらず普遍、と考えられます。 

2点目は、連想の基盤となる語彙、知識/文化的背景を決定づけるのは何か、という点です。今回の可視化により、価値観よりもデモグラフィック属性の方が影響が強いように感じました。ただ、詳細は価値観類型ごとの語彙との定量的な比較が必要でしょう。

3点目は可視化そのものの重要性です。この実験の大きな目的に、人の心象イメージの理解がありますが、ことばの列挙だけでなく、それを可視化することは、自分の知識にとらわれることなく、その人の感じていることを理解する助けになる、と感じました。これは今後のアウトプットに活かしたいと思います。

心のモデル化への道のりは遠いですが、少しずつ実験をすすめていきたいと思います。


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