“デザイン思考”と“データサイエンス”と“パターンランゲージ”と



データ分析の結果をどう活用するのか?

ビッグデータやデータサイエンスの現場課題として、データをいかにビジネス実践に落とし込むか、経営課題の解決にどう使うか、マーケティング実務担当者をいかに巻き込むか、という「データ活用」課題の話をよく聞く。

昨年のオープンラボでは、「デザイン・シンキングのための共創の『場』づくり」を発表したが、“人間中心設計(HCD)”・“デザイン思考”と、“データ・サイエンス”・“統計学”の、それぞれの知見を結集し協働していくことで、「データ活用」の現場課題を解決していくことができるとあらためて思う。

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“デザイン思考”דデータサイエンス”のための「パターンランゲージ3.0」

そして、“人間中心設計(HCD)”・“デザイン思考”と“データサイエンス”・“統計学”を噛み合わせていくために「パターンランゲージ3.0」に注目し、中でも"Pedagogical Patterns for Creative Learning", "Educational Patterns for Generative participants"がマーケティング現場実践において使いやすいという実感を持っている。

これらのパターンランゲージは創造的学習の現場よりマイニングされたものであるが、コラボレイティブ学習の研究と経営組織の研究の関係を考えると、これらがビジネス実践においても使いやすいことは当然ともいえるだろう。

ユーザーエクスペリエンスと状況的学習論

たとえば、『知識創造企業』であまりにも有名な野中郁次郎氏は、“知識経営”における“場づくり”の重要性について言及しているが、その野中氏が“教育学者”であるエティエンヌ・ウェンガーの『コミュニティ・オブ・プラクティス』翻訳書にて解説しており、そこで「よい場」について下記のように書いている([1]より引用)。

「異なった価値観を持った人間が『場』を通じた相互作用で対立を乗り越えていく知の創造過程」を生み出すための、「よい場」の条件を次に挙げる。

  • 1.主体的意志と能力を持つ人で構成される、自己組織化された時空間「場」には自由がなければならない。自立的に、自己組織化された時空間であるべきなのである。しかし、個々人がばらばらで無秩序な状態からは意味は生まれない。
  • 2.開かれた(浸透性のある)境界と関係性「場」という場所性を維持する上では、その境界は必須である。しかし、閉鎖的な時空間であってはならない。外部からの浸透を受け入れる寛容さが必要なのである。
  • 3.多様な背景、視点を持つ人との「弁証法的」(dialectiacal)対話弁証法とは、一つに対話的思考といえる。プラトン的な(問答と含めた意味での)対話によって心理を追究していく姿勢である。
  • 4.時間・空間のみならず自己をも超越する(自己超越性)「場」は参加者に一段高い視点を与え、参加者が外部に視点を移して自己を見ることを可能にする。「場」に参加することは、「場」にコミットし、自己の限られた視点や境界を超越することである。

中略

「よい場」には、人数にかかわりなく主観性(subjectivity)を持った個人、間主観性(inter‐subjectivity)を成立させるコーチ、それを超主観性(trans-subjectivity)に拡大させるアクティビストの役割を組み込む必要がある、ということを意味している。

知識創造企業とは、対立概念を革新的に組み合わせ、すなわち弁証法的に「綜合」して、より大きな、次元の高い知識を生み出していくプロセスを実現する企業

このように「ビジネス・経営」と「教育学」、特に『コミュニティ・オブ・プラクティス』のような状況主義の学習論との関連性は深い。そして、この状況主義は、人間中心設計(HCD)やユーザーエクスペリエンスを語る上で欠かすことのできないドナルド・ノーマンも、“状況論的”とされている[2]。

最後に

“人間中心設計(HCD)”・“デザイン思考”と“データサイエンス”・“統計学”を掛け合わせた「データ活用」、そのための「パターンランゲージ3.0」"Pedagogical Patterns for Creative Learning", "Educational Patterns for Generative participants"、“状況的学習論”、“知識創造理論”、“場づくり”・・・課題に対して先人が築いた理論や知はすでに多くある。
それらを総合活用し現場実践を積み重ね続けていくこと、その先に次なる道が拓けると思う。

[1] エティエンヌ・ウェンガー, リチャード・マクダーモット, ウィリアム・M・スナイダー: 『コミュニティ・オブ・プラクティス―ナレッジ社会の新たな知識形態の実践』, 翔泳社, 2002.
[2] 安西祐一郎: 心と脳―認知科学入門, 岩波書店, 2011.


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