音響学会2014春:声の印象を表現する単語による認知構造モデルの検討


こんにちは、高椋です。

今回は2014年3月の音響学会春季研究発表会でポスター発表した
「声の印象を表現する単語による認知構造モデルの検討」
についてご紹介します。

はじめに

私達は声に含まれる言葉以外の情報を印象として受け取り、
相手の属性や性格、感情など様々な情報を瞬時に推測し
コミュニケーションに活かしています。
この人間の行う高度な処理をシステム化したいのですが、
 ・声から何を感じているのか?
 ・その認知構造はどうなっているのか?
についてはまだ明らかではありません。
声の印象を表現する言葉(印象語)とその関係を調べることで
これらについて理解を深めようと考えました。

調査概要

(1)声の印象を表現する言葉(以下、印象語)の収集と分類
(2)声の印象評価調査の実施
(3)印象語と音響特徴量による、声の印象の認知構造モデルの作成と検討

(1)声の印象を表現する言葉の収集と分類
  新聞コーパスの単語N-gram(「日本語ディクテーション基本ソフトウェア 最終版」)から「声・口調・話す・しゃべる」と共起する単語(約670語)を収集し、話者に関する推定情報・評価者の感情や受ける印象・情報源・印象の主観性などを軸に分類しました。
Fig.1より人が声から多くのことを感じ、推定していることがわかります。

Fig.1 「声」に関係する単語と共起する単語の分類

Fig.1 「声」に関係する単語と共起する単語の分類

(2)声の印象評価調査の実施

 評価語 :主に声質と話し方、話者の属性(性別・年代)に関する90語を(1)より選択
 評価音声:スマートフォンアプリ【声タイプ診断】で収集した音声からランダムに750音声選択
 評価  :約1000人(男:女=50:50)が1人5音声ずつ評価

(3)印象語と音響特徴量による、声の印象の認知構造モデルの作成と検討

 モデルの構造は、音が耳に入り、感情が動き、その後にその声を表現する言葉を思い浮かべる順に
 階層構造を仮定しました(Fig.2).
 今回は女性による女声評価データ(912件)を学習データとし、ベイジアンネットワークにより
 声の印象の認知構造モデルを作成しました(Fig.3)。

Fig.2 仮定した声の印象知覚認知モデル  Fig.3 声の印象の認知構造モデル(女性による女声評価)

 

感度分析の実施

 
  作成したモデルが定性的知見とずれていないか確認するため感度分析を実施しました。
  ある1変数のみに証拠を与えた場合に、与えた変数以外の変数の感度を
  下記より計算しています。
   感度=事後確率-事前確率
  感度が高いほど与えた変数の影響が大きいと考えられるので、
  感度の高かった変数を調査しました。

Table.1 感度分析結果

 

 “好き”を説明するのには「丁寧/親しみやすい/落ち着いた」がよく使われています。
 “嫌い”の場合は「いら立つ/変な」といった言葉が使われ感情的な感じです。
 “高い声”だと「可愛い」又は「変な」と評価される確率が上がります。

 構築したモデルから得た結果は、通常の感覚とそんなに違いはなさそうです。

まとめと今後の課題

 
 今回は、まず印象語の収集と分類により、人が声を聞いた時に感じる内容
 (話者に関する推定情報・評価者の感情や受ける印象・情報源・印象の主観性)
 について整理を行いました。
 次に、女性評価者による女性声の認知構造モデルを作成し、言葉の関連を見ることで
 知覚認知構造の理解を深めることができました。
 
 今後は、女性とは違う構造になるであろう男性声の認知構造モデルの作成や
 評価者の属性や価値観による評価の違いも調査したいと思っています。

 課題はまだ色々ありますが、作成した認知構造モデルをシステムに組み込んで
 印象推定のシステム化や、なりたい印象の声になるためのアドバイスなどに使えたらと考えています。

最後に

 
 ポスター発表中「面白い」「今までの研究の知見ともあっている」
 「このリンクはこの方がいいんじゃないか」「男女や評価者の属性でモデルを分けるべきか否か」
 などご意見やアドバイスを頂いたり、意見交換をすることができました。
 また声質に関する音響特徴量についても貴重なアドバイスを頂き、試してみたいと思っています。

 私がポスター発表を選んだ理由は、こうしてお話をしてご意見を頂きたいからなので、
 今回の発表もとても有意義でした。
 ポスターを見に来て下さった方々、ご意見を下さった方々、今この記事を読んで頂いている方々に
 この場をお借りしてお礼を申し上げます。有難うございました。

声の印象を表現する単語による認知構造モデルの検討_講演原稿
声の印象を表現する単語による認知構造モデルの検討_ポスター


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