データからの社会的価値創出


「2014年11月15日の東京でのオープンラボについてレポート書いてよ」と言われながら、早くも2週間が過ぎてしまいました。11月末に参加した研究会から刺激をいただいたこともあり、遅くなりましたが報告したいと思います。(その研究会のことはまた改めて)

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東京でのオープンラボは産総研のサービス工学コンソーシアム、データ活用プラットフォーム研究会との共催で行いました。そのため大阪会場とは異なり、データ活用プラットフォーム研究会から二つの講演とパネル討論が企画され、展示会場にも研究会メンバーからのポスター展示が追加されました。私からは講演とパネル討論についてまとめたいと思います。

二つの講演とパネル討論のテーマは「データからの社会的価値創出」というものです。そもそもデータ活用プラットフォームとは、社会的な共有価値のためにデータを活用する方法を研究する集まりなのですが、実はこの社会的共有価値というものをステークホルダーの間で適切に設定することが難しいことが分かってきました。つまりデータ活用の結果としてどういう価値創出を目指すのかについても議論すべきではないかという趣旨です。

研究会を主宰する本村先生からはビッグデータ活用の壁として以下を挙げておられました。

現実 vs 理想
データがあるところ データを使いたいところ
今あるデータ(形式) 使いたいデータ(形式)
データを取る目的 データを使いたい目的

そして、この壁に取り組むためには、課題を持つ現場に介入し必要なデータを取りつつ問題解決の仕組みづくりを目指す(アクションリサーチ)ことが重要とおっしゃいます。

基調講演では、社会的共有価値とは何かを知るための事例として、「コンパクトシティを目指す街づくりに見る社会共有価値の共創 ~中心市街地活性化と健康まちづくり~」と題して富山市都市整備部長 京田 憲明様にご講演いただきました。私はコンパクトシティという言葉は知っていたものの、コンパクトというのは単なる分類ぐらいに思っていたのですが、お話を伺うと非常に能動的な取り組みであって、これから人口減少トレンドに向かう多くの都市にとって避けられないテーマであるということが初めて理解できました。

コンパクトシティを目指す街づくりとは以下の3点を実現するもののようです。

  1. 公共交通の活性化
  2. 公共交通沿線地区への居住促進
  3. 中心市街地の活性化

ご講演では具体的かつさまざまな取り組み事例を紹介してくださいました。いろんなことをやる、ということ自体も取り組みの可視化という意味で重要のようです。

これら取り組みが一定の成果を見せたのちには「健康」「質の高い魅力的な市民生活」ということを掲げているとおっしゃいます。健康に関する具体的な事例を一つ挙げますと、高齢者に公共交通を使っていただき積極的に「歩いてもらう」ことが健康維持にも役に立つ、とのお話がありました。従来型の行政の発想だと、社会保険や医療・介護制度といったことに向かいがちですが、予算確保が難しい現実があります。一方で都市整備や道路整備も進めなければならず、これを同時に満たす取り組みになっているというのです。実際、富山市では高齢者が歩くことで医療費の削減効果があるという試算を行い、これを元に交通機関利用の補助や歩道整備の予算を根拠づけたそうです。「保険部門で歩道を作ることは困難だが、都市整備・道路整備は日々行われている」というお話が印象的でした。

私は、このあたりにデータからの社会創出価値における重要な示唆を感じました。行政だけでなく、生活者に製品やサービスを提供する企業であっても、自社の製品やサービスを通してしか生活者と関わることはできない訳で、企業の間でも同様に部分最適に陥りやすいのでは思われます。同時にこのようなステークホルダー横断型のテーマ設定はどのように達成できるのだろうかという疑問も生じました。パネル討論で京田様に尋ねてみたところ、以下のように教えていただきました。

  • テーマはトップダウンに決まったのではなく、垣根を越えて話し合う中で、後々気づいてきたこと
  • 目先の改善ではなく、住民の幸せにつながるような根本的なテーマに向かわないといけない、ということは誰がいつと言うこともなくだんだん分かってきたことである
  • 話し合いが生まれる土壌としては、担当者同士も縦割りは良くないという意識があり、市長からもセクショナリズムをやめろという方針があったため、担当者同士がつながってお互いの課題を共有するということが出てきた
  • そうすると、あっちの課題をこっちで解決できそうといった具合で連携がとれるようになった

また、パネル討論では産総研の竹中様より、オープンデータの先進事例についてご紹介いただきました。全国の自治体でオープンデータということに関心が集まっていますが、多くはオープンにすること自体が目的となってしまい、どう活用するかについてはまだまだというところのようです。そんな中、千葉市では外部からCIOを招いてオープンデータとその活用に取り組んでおられます。

紹介いただいた中から一つちばレポを挙げておきます。
これはボランティアから寄せられた街の課題をGIS上にマッピングし、同じくボランティアが解決にあたるという取り組みで、千葉市は課題解決ニーズとボランティアのマッチングを支援する形で行政コストをあまりかけずにやっておられるというお話でした。GISと各種データのマッシュアップというのいろいろな可能性があるアプリケーションのようです。

竹中様からも、データ共有と活用の問題提起がありました。

  1. 何の目的で何のデータを共有するか?
  2. 誰がそのデータを所有するか?

前者の問題は会の趣旨と同じものと思います。データの取得と公開にはコストとリスクがかかるが、これに見合うリターンを評価することがポイントではないかという指摘がありました。また京田様は、千葉市のように小さな取り組みから始めるということに賛同されていました。続けて、自治体の担当者レベルだと個人情報などのリスクを恐れてクローズする方向に動きがちなので、国がデータ使用について何をどういう目的で、どこまでならOKというガイドラインを示してほしいと述べられました。

後者については、地域の課題解決ならその地域の自治体が主体となるべきではという結論でした。また、社会的な活動であっても持続的なものとするにはビジネスの観点が重要であり、民間の関与が必要という意見も挙がっていました。

以上、拾い切れていない話題もたくさんありますが、私の目からみたまとめです。講演や討論を通して、会場ではみなが社会的な課題に取り組まなければならないという認識が共有されたように感じます。当社R&Dが取り組むソーシャルイノベーションにも何らかヒントを与えるものだったと思います。


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