第98回行動計量シンポジウム レポート



はじめに

3月21日、産業技術総合研究所臨海副都心センターにて、日本行動計量学会と独立法人 産業技術総合研究所の共催による第98回行動計量シンポジウム「ビッグデータからの価値創出~『グロース戦略』を実現する共有・共創・協働のプラットフォーム~」が開催されました。弊社も協賛し、実行委員として運営にも携わりました。

シンポジウムプログラム

年度末かつ3連休の初日という日程にも関わらず、Webによる事前の参加申込みが想定以上に伸びたため、開催前に申込みを締め切る事にしましたが、結果的に定員の80名を上回る94名のご来場がありました。シンポジウムでは研究者や企業のマーケティング実務者など幅広い参加者により、各セッションで熱心な議論が行われました。「ビッグデータからの価値創出」というテーマに対する参加者の関心の強さが伺えます。以下当日のプログラムに沿って概略をご紹介します。

プログラムについて

講演1

講演1

まず、東北大学の石垣司先生より「成長を実現するためのビッグデータからの確率的潜在意味解析と構造的モデリング」というタイトルでチュートリアル講演をしていただきました。講演では、グロースハックにおけるデータ活用と、PLSAやベイジアンネットワークについて紹介されました。先生は、持続的な成長のために重要なことは表面上のデータ分析ではなく、データ活用のPDCAの仕組を作ること、そしてこれをWebだけでなくリアルでも実現することが課題であると結論されていました。

講演2

講演2

次に、横浜国立大学の本橋永至先生より「デジタルマーケティングにおける戦略的データ活用」と題して講演いただきました。先生はマーケティングにおける分析がビッグデータによってどう変化しているかを、意志決定の頻度とタイミング、データの質、統計技術という視点で整理し、まとめでは「ビッグデータ時代のマーケティングでは、ROIの測定(診断)とITを駆使したコミュニケーション(処方)を的確に実行することが重要であり、そのための鍵がデータからの情報抽出技術(レンズ)である」と述べられました。

講演3

講演3

産総研の本村陽一先生からは、「新たなデータ活用プラットフォームにより実現する共有・共創・協働する社会に向けて」と題した講演がありました。今や価値のある情報は生活現場にあり、それは容易に入手出来ないため、サービス提供者と受益者が共創・協働していくことが重要だと指摘され、その事例を紹介くださいました。一方でこうした事例はスケールしにくいため、データや知識を組織間で共有することが不可欠であると述べられ、そのためのプラットフォームづくりを呼びかけておられました。

トークセッション

トークセッション

本村先生の講演に続いてトークセッション「成長、イノベーション、地域活性化のためのデータ活用:ビッグデータに何を足し、何を引き出すか?」が行われました。パネラーには講演の先生方に加え、実業界から株式会社エルネット 越野氏、株式会社シグマクシス 松岡氏、シナジーマーケティング株式会社 谷田が登壇し、さらには聴衆からの質問も活発で、今後への問題提起を会場全体に呼びかけるものとなりました。

議論のポイントを抜粋すると「ビッグデータ分析は細部の改善ではなく経営レベルの意志決定に貢献できるか」「データを活用した結果としての新旧システムの対立を避けるにはどうすればよいか」「地域活性化におけるKPIをどう設定すべきか」などビッグデータ活用の最前線を知る参加者ならではの具体的な内容となりました。今やビッグデータに対する分析技術にとどまらず、ビッグデータを活用することの本質的意義やポテンシャルの大きさ、それを具現化するために必要となる体制づくりや取り組み方、運用方法についての方策が求められていると感じます。

それを受けた回答や提案として、「どういう目的で何を変えるかという『ストーリー』や『シナリオ』を持ってデータ分析にあたるべきである」「新しい取り組みはスモールスタートさせ、並立しながらグロースによって旧システムを逆転すると良い」「ある現象のスナップショットではなくその『ダイナミクス』や『プロセス』を捉えることが重要である」「購買履歴など、行動の『結果』を表わすデータだけでなく、その『要因』となる意識や背景に関するデータを融合した分析が不可欠である」といった具体的な提言がなされました。こうした本質的議論を継続することの重要性が共有され、次回、5/16には同じ産総研臨海副都心センターにおいて産総研サービス工学コンソーシアム内の研究会として活動を継続していくことが発表されました。

ポスター・パネル展示

展示会場

講演会場の隣には企業や研究所など11組織からのべ20件、研究発表や製品展示を行うブースを設けました。講演の合間に多くの来場者が訪れ、各ブースの説明に耳を傾け質問を行う姿が数多く見られました。

懇親会

懇親会1懇親会2懇親会3

プログラムの最後には会場のロビーにて有志による懇親会が開かれました。60名ほどの方が引き続き参加し、講演や展示内容についての議論が行われました。乾杯の挨拶は日本行動計量学会より理事の多摩大学 大森 拓也先生にしていただきました。先生からは「大変な盛会でうれしい。このシンポジウムに行動計量学会員は少なかったようだが、行動計量というのは人間の行動に関する科学で幅広く応用でき、有意義な学会だと思うので、興味のある方は是非入会、あるいは各地のセミナーなどに足を運んでいただきたい」との挨拶がありました。最後の挨拶は本村先生からで、今回の勢いを是非今後につなげていきたいと締めくくっておられました。

今後の展開

トークセッション等で紹介があったとおり、本シンポジウムの趣旨であるビッグデータからの価値創出やそのためのプラットフォームづくりについては引き続き産総研主催の研究会にて議論を続けることになっています。5月16日のイベント2件についてはこちらをご覧下さい。


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