“KJ法”と“U理論”と“場の論理”と



“U理論”と“KJ法”と

U理論vsW型問題解決モデル

図1:U理論とKJ法(W型問題解決モデル)

U理論とKJ法は、手法・アプローチとしては異なる。また、U理論の「U」とKJ法W型問題解決の「W」(図1参照)、横軸は進む順序で同じだが、縦軸は意味が異なるので注意が必要。
しかし、本質的な部分で共通性がある(それぞれ別の角度から違う尺度で説明されたりはしているが)。両者のいくつかの共通点については下図の通り。なお、厳密に比較検討するのはきりがないが、両著の読み比べをすることはおすすめ。

U理論とKJ法

図2:U理論とKJ法の共通点([1,2,3]を元に筆者にて一部編集)

また、U理論の「感じ取る(sensing)」について、「このような主体と客体の二元論を超える能力を磨くのが仏教の瞑想法」と解説され[3]、一方のKJ法も主客未分離の渾沌を出発点とするものであり、仏教思想・禅と西洋哲学の融合を目指した近代日本哲学を代表する西田哲学との関係が深いことは以前コラムで紹介した通りになる[2]。

こうしてみていると、『科学するブッダ』(佐々木閑 著)の一節を想起してしまう。

“ガウスもアインシュタインも、ヒルベルトもゲーテルも、およそ科学理論の構築に貢献した人たちで、思考に沈潜する習慣を持たなかった人などひとりもいない。科学者たちは瞑想するのだ”
“頬杖をつき、半眼になってじっと宙を見つめながら、なにごとかに思いをめぐらしている科学者の顔に、私はすっかりしびれてしまう。その理由はただひとつ、彼らの頭の中に宇宙の心理が輝いているからである”
“解くべき問題は違っていても、ブッダと科学者は同じことをしている。瞑想して真理を知るという、この点で、科学者とブッダの間に違いはない”

そして、“場の論理”

清水博先生は、能(世阿弥)や剣術(柳生新陰流)や禅(龍安寺石庭)などを例示し、日本は「仏教を基礎に普遍的な『場の文化』を生み出した経験をもつ世界でも特殊な国」で、世界が注目しているこの「場の文化」の創造を現代でも活かすことが重要だと説いている[5]。
(清水先生は、哲学などではなく、“生物物理学”を追究してこの場の論理に至り、“結果的”に西田哲学と内容が通じたということも非常に興味深い。)

KJ法、U理論、場の論理という様々な切り口から掘り進めて、すべてが共通するポイントを見出すことで、本質を理解できるのではないかと思う。これらの理論・方法論を深め、「クリエイティブな発想」「共創」を実践するために、日本文化・東洋哲学を学び、多角的なアプローチをすることは効果的だろう。なお、西洋と東洋のどちらが優れているとか、どちらがいいかという二者択一論の立場で書いているのでは決してないことは強調しておきたい。

創造力・想像力・発想力・構想力、ひらめき・アブダクションのために

ビジネス・デザイナー濱口氏は「制約条件を意識的につくるのが、世に言う“クリエイティビティ・ツール”というやつなんですよね」「それをやるとイノベーティブな発想は生まれてこないんです」と指摘している[6]。
私もこれまで様々な思考ツールを試してきたが、結局その方法論の外側で“ひらめく”かどうかがボトルネックになるということを多く経験した。(なお、この“ひらめく”というのは、まさにアブダクションに他ならない[7]。)

そして、“ひらめく”には、どうすればいいのだろうかと問題意識を持ち探究している
Biz/Zine(翔泳社)で連載した「デザイン思考×ビッグデータ」の最終回「イノベーション・リーダーに必要な『統合思考』~自分の“ひらめきパターン”を知る」の注釈で、KJ法とU理論の共通点があると書いたが、その補足としても、KJ法とU理論の比較をここでまとめてみた。

KJ法とU理論などの理論・方法論を、それぞれ単体で深めていくだけではなく、相互に比較しながら総合的に理解していくことでみえてくるものがある

さてさて、実践あるのみ。

<補足>
方法論としての正則なKJ法をしっかりと学ぶことは有用。KJ法の9割は誤った運用がされていると指摘されるし、分類法だという勘違いも多い。正しくKJ法を実践するための参考文献としては、『発想法―創造性開発のために』(川喜田二郎 著)、「KJ法における作法の研究」。

 

<参考文献>
[1] 『U理論 ―過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』C・オットー・シャーマー(著) 英知出版 2010年
[2] 『KJ法 ―渾沌をして語らしめる』 川喜田二郎(著) 中央公論社 1996年
[3] 『出現する未来』ピーター・センゲ/C・オットー・シャーマーら(著) 野中郁二郎(監訳) 講談社 2006年
[4] 『科学するブッダ 犀の角たち』佐々木閑(著) 角川学芸出版 2013年
[5] 『場の思想』清水博(著) 東京大学出版 2003年
[6]  「世界的イノベーターの人生を方向づけた仮説とは【特別対談】濱口秀司×ちきりん(2)」 ダイヤモンド社書籍オンライン
[7] 『アブダクション―仮説と発見の論理』米盛裕二(著) 勁草書房 2007年


This entry was posted in KJ法. Bookmark the permalink.