摩訶般若波羅蜜多

 こんなに書けないと思った記憶がないぐらい書けなくなっている。こういうのをスランプというのだろうか。そんな単純なもんじゃない。書き始めては筆が止まる。思考が先に進まず止まる。一切の記憶、意思、考えが停止する。身心が止まる...

 どうしても許せない女だ、通り過ぎていく車のヘッドライトの眩しい光を浴びて目を細めながら桜は思った。夜が進んでも昼間の凶暴な光が街に残した熱のせいで、桜の露出した腕を通り過ぎていく空気は、まだ生ぬるく感じられるままだ。湿...